第28話:20年前の約束
基礎工事もギリギリに変更を繰り返しながらも、なんとか「実験工事」・「測定センサー設置」も含めて完成しました。
基礎は終わりましたが、木工事開始まで1か月ちょっと空きます。
理由は、今回の木工事は当初から大工さんが決まっていたからです。
担当大工さんがいつから決まっていたのかと言いますと・・、
20年前からです。
20年前、私はN建設に勤務するペーペーでした。
もちろん、その当時から断熱気密については、勉強しながら知識を増やしておりました。
そして、その大工さん(T大工さん)は、N建設ではなく別のハウスメーカーに所属する大工さんでした。
何故、そんな別のハウスメーカーに所属するT大工さんと接点があったのかといいますと、N建設の物件が重なったときに大工さんが不足してしまい、そのハウスメーカーさんから助っ人として一時的にお借りしたのでした。
N建設時代・・、私の記憶では、T大工さんと現場を一緒にしたのは、その1物件だけだったと思います。
その現場を進めている間のお互いの印象はこんなものだったと思います。
(私のT大工さんに対する印象)
〇 難しい仕事でも丁寧にこなして、自信満々でありながら低姿勢な大工さんだなぁ・・。自分の意見をどんどん言う大工さん。
(T大工さんの私に対する印象:あとで聞いた話)
〇 普通は、自分(T大工さん)が「こうしたほうがいい。こんな感じで施工する」と意見をいうと、ほとんどの現場監督は「はい。お任せします」と言う。
こいつ(私)は、まだ若いくせに「それはお任せします。でも、これは断熱の観点から、こういう感じで施工してください。」と自分の意見を持ってくる。
その割には、下請け業者に対して偉そうにしない。
〇 現場のごみ運びや、雑作業など、普通の現場監督が嫌がる作業も気にしないでやっている。
こんな感じです。
そんな現場での木工事は、きれいに施工したいT大工さんの意見と、断熱理論をきちんとしたい私の意見をすり合わせながら、がっぷりよつで進んでいきました。
終盤にはこんな会話が出るほど、私とT大工さんは仲が良くなっていました。
T大工さん 「白鳥さんは、いずれ独立するタイプだな。」
私 「え?俺が独立するんですか・・? 今のところはイメージが出来てませんね。」
T大工さん 「間違いなく独立する。」
私 「いつか独立したいなぁ・・という思いはありますが・・」
T大工さん 「そのときは、俺が手伝ってやるから声かけて。この現場終わっても、俺の現場にちょこちょこ仕事を見に来てよ。俺の仕事ぶりが分かるから。」
私 「見に行っていいんですか?それじゃ、面白い現場があったとき一度ご連絡いただけませんか!」
T大工さん「それと白鳥さんが自宅を建てるとき俺がやってやるから。」
私「ホントですか!?それはお願いしますね!。」
その当時は、仙台から150kmも離れた岩手に来るとは夢にも思っておらず、仙台のどっかに家を建てるのだろう・・と思っていました。
T大工さんとは、その後、仕事を一緒にすることは無かったですが、T大工さんがやっている某ハウスメーカーさんの現場を見に行ってその腕の良さをますます知ることになったり、断熱施工的な意見交換をしたりする機会があり、なんとなくつながっていました。
たった1つの現場をいっしょにやっただけで「白鳥さんは絶対に独立する」と言い切ったT大工さんは見る目があったということなのでしょう。今思えば、すごいです(^^;)。
そして、私が本当に独立するときも相談したりして、独立後、本当に私の現場を手伝ってくれるようになりました。
独立して約13年も経ちました。
ようやく自宅を建てる機運が高まり、そんな我が家の家づくりの約束をしたのは約20年前・・。
私「我が家の木工事に、岩手まで来れますか(^^;)?」
T大工さん 「仕方ないなぁ・・。20年前の約束だから・・。」
つづく
【木の香の家 展示場 兼 実験住宅 物語は 5日 15日 25日 に何とか更新していきます。】
第27話:地中熱利用 「ヒートポンプ」って何?
この実験住宅には地中熱を利用するため地面に深さ100mの穴を1本掘っています(ボーリングにて)。
【 サンポットのカタログのイメージ図です。 】
深さ100mというと図にするとこんな感じです(長っ・・(@@;)
その100mの穴に液体を循環させるパイピングをして「暖房」や「融雪」・・、
そして、なんと「冷房」にも地中熱を使います。
言葉にするのは簡単です。
でも・・、「暖房」や「融雪」に熱を利用するとすれば、それは「50℃~80℃」の熱が必要になります。
地中の熱はせいぜい10数℃です。
地中の熱が10数℃なのに、どうやって50~80℃の熱になるのでしょうか・・。
それが 『 ヒートポンプ 』です。
<<< ヒートポンプを少し理解してみましょう >>>
① まずは「物質」で考えてみましょう。
丘の上に「池A」があるとします。丘の下の方に「池B」があるとします。
雨が降ると「池A」の水はあふれて、小川を通って下の方にある「池B」に水が流れます。
このように、物質は「高いところから低いところ」に移動します。
しかし、何らかの事情で「池B」の水を「池A」に送りたいと思ったとき、どうすればいいでしょう?
そうです。ポンプを使うのです。
ポンプを使えば水は「低いとことから高いところ」に移動します。
② 今度は「熱」について考えてみましょう。
中央を断熱ドアで仕切った2つの部屋があります。
左の部屋の室温は30℃とします。右の部屋の温度は10℃とします。
その状態で、断熱ドアを開けると、
左の30℃の部屋から右の10℃の部屋に「熱」が移動して同じ温度になろうとします。
これを先ほどの丘の図にすると、熱も「高いところから低いところ」へ移動しているということになります。
しかし、「地中熱」や「空気熱」のようにちょっと低い温度では、そのまま生活熱には使えません。
『少し低い温度の池』から室内の「暖房」や「給湯」に使える『高い温度の池』に
熱を何とか移動させないとなりません。
それをするのが「ヒートポンプ」なのです。
そうなのです。
熱も物質と同じようにポンプを使えば、低いところから高いところへ移動できるのです。
もう少し具体的に言いますと、
10℃の水を「何らかの方法」で50℃に変化できると・・、
20℃を必要としている暖房に使えます。
40℃を必要としているお風呂に使えます。
・・ということなのです。
なんとなくヒートポンプのイメージが出来てきましたでしょうか。
「何らかの方法」とは何でしょう・・。それは物質の「圧縮」です。
空気でも水でも、圧縮すると熱が上がります。
人間の力で圧縮する程度では大きな温度上昇は感じませんが、機械の力で圧縮すると温度がかなり上がるという仕組みです。
外気温‐5℃~‐10℃の空気から熱を汲み上げる方法を「空気熱ヒートポンプ」と呼び、10数℃の地中を通して10数℃になった液体を圧縮して熱を汲み上げる方法を「地中熱ヒートポンプ」と呼びます。
もちろん、少しでも高い温度の物質を圧縮するほうが、より安定した高い熱に変化できます。そのため地中熱のほうが効率は良いということになります。
「物質」や「熱」は、自然の法則として、高いところから低いところへスムーズに流れます。
でも、なぜか「お金」は 高いところから低いところへスムーズには流れません(^^;)
蛇足でした・・(--;)
この地面に100mも掘っていろいろと調査・実験しています。
測定結果は、のちのち考察&公開していきますのでご期待ください(^^)
つづく
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第26話:基礎工事中の慌ただしい変更
基礎が進行しているのと並行に新しいソーラー集熱の実験の打ち合わせが進んでいたため本当にギリギリでの基礎変更が多くありました(--;)。
① 排熱貫通孔の設置
基礎の立ち上がりをソーラー集熱の配管が通ることになったため、貫通するパイプを事前に設置することが必要になりました(下図の赤丸部分です)。
コンクリート工事の後に直径20㎝もの大きな孔を空けるのは非常に大変な作業になるので、断熱型枠を施工するギリギリの段階で貫通パイプの設置が行われました。
もし、下の写真のようにコンクリートを流し込んで固まった後ですと、ほぼアウトだったギリギリの変更でした(><)
次に玄関土間を挟んで東側の蓄熱層に温風を送るダクトも、
玄関土間のコンクリートを施工する前に設置しないと完全にアウトの工事でした(下図の青丸部分)。
断熱ダクトで巻いて、その後ここは砕石とコンクリートでかさ上げを行いました。
② 蓄熱層の施工
ソーラー集熱を蓄熱するため、「型枠ブロック」と呼ばれるものを設置することが決まりました。
その設置の様子が下の写真です。
蓄熱ブロック施工後、鎌田先生や他の研究者の方も確認に来ていただいて次の指示を受けました(^^)。
③ 融雪配管の施工
最後にウッドデッキにする予定だった部分をタイルテラスにして、かつ融雪実験の配管をするというまさに綱渡りのような変更工事でした(^^;)
どの作業もタイミングが悪ければ実験そのものがアウトになり兼ねない非常にヒヤヒヤの変更工事が続きました(><)
ギリギリで何とか進んでいることに、「いい流れなんだ」と
ポジティブに考えることで前に進んでいる印象でした(^^;)
基礎屋さんも「半分苦笑い」「半分ぼやき」のような感じで工事は何とか進んでいきました。
つづく
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今回は 温湿度バランスについてちょっと知識を持ってみましょう。
簡単な勉強です(^^;)
下の図-①は温湿度を見る表です。
【 図-① 】
ちょっと見づらいですので、少し色を付けてみましょう。
図-② をご覧ください。
少し斜めに引いたオレンジの線が室温の 20℃ 25℃ 30℃ です。
そして 曲線が湿度を表してまして、緑が湿度50% 黄色が湿度40% 青が湿度30% を示します。
【 図-② 】
木の香の家の最近の家づくりでは湿度バランスが取れて来て、
★マークの 温度21度前後 湿度50%前後 で暮らしている方が多いです。
いわゆる「適温・敵湿度」です【 図-③ 】。
【 図-③ 】
その絶対水蒸気量を変えずに室温が30℃まで上がると・・
なんと・・湿度は30%を切ってきます 【 図-④ 】。
これは乾燥状態になります・・(><)。
その乾燥感を無くすには、温度上昇を過剰にしないか水蒸気量を増やすか・・など
いろいろ工夫が必要になります。
このように空気とはバランスをとるのが非常に難しく、
今回はソーラー集熱をしながら、この乾燥状態を何とか無くしたいという
実は、かなり難しいチャレンジをしようとしているのです(><)
うまくいったらすごいです!
つづく
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第24話:エコテクノルーフでのチャレンジ-その②-「 ソーラー集熱 + 非乾燥感 」
エコテクノルーフによる「融雪実験」と「雪が落ちた場合の対策」について方向性が決まりました。
次は、私が気になっている項目について議論がなされました。
それは「ソーラー集熱は過乾燥にならないのか...?」ということです。
ソーラーパネルの裏面の温まった空気を使うソーラー集熱(ソーラー集熱部分の名称は「そよルーフ」)は、太陽のエネルギーを無駄なく利用するという点では素晴らしいといえます。
気になっているのは、ソーラー集熱された空気がどれくらい温まって、それによる乾燥感が起こらないのか・・という点です。
(現在の高断熱高気密住宅と呼ばれる家づくりは、多くのハウスメーカーさんの住宅では冬の乾燥感がすごい状況です。
ほとんどの営業マンがそれについて説明をしませんが、質問すれば重い口を開いて「冬は乾燥します」と言い切ると思います。
そのため、乾燥感のあることが一般的なので、ダメなシステムというわけではありません。・・ということを付け加えておきます。)
ただ、木の香の家では長い試行錯誤の結果、冬期間にようやく乾燥感の少ない湿度45%~60%くらいをキープできるような住環境にできています。
いわゆる、「適温+適湿度」で暮らせるようにコントロールできているのです。
それを、「社長の家は乾燥感がすごいです」・・とは言いたくないという事情があります。
もちろん、私自身も乾燥感のキツイ家には暮らしたくないという思いもあるためです。
**********************
私 「ソーラー集熱の場合、最高で何℃くらいの空気が何m3くらい入ってくると予想しますか?」
K社さん「最高ですと、60℃くらいの空気が500m3/hくらい入ってくると思います。」
私 「500m3っていったら、家の気積と同じじゃないですか...。しかも、レンジフード2台分の風量ですか...。すごくないですか?」
K社さん「500m3/hといっても一時的な風量であり、供給されればまたソーラー内部の集熱温度は下がりますし、供給量も下がります。」
私 「湿度何%くらいのが入ってくるんですか?」
K社さん「温度は50~60℃で、湿度2~3%くらいです」
私 「え!そんな乾燥空気が入ってくるんですか!?・・・。 家の中、過乾燥にならないんですか?
今まで、OMソーラーさんの家って乾燥してないんですか?」
K社さん 「そうですねぇ。加湿器は手放せないと思います。」
私 「えぇ...それはやだなぁ...。せっかく『乾燥感の無い家づくりなんですよ!』って自信持っているのに、乾燥感が出ると会社としてちょっと嫌ですねぇ・・」
私 「熱だけもらって、残った乾燥空気・・捨てられませんかねぇ・・」
**********************
ソーラー集熱の場合、一般的には集熱効果を最大限引き出すために、集熱した空気は床下にそのまま供給します。
そこから、室内に送り込まれて家が温まるという考え方です。
もちろんこの方が集熱エネルギーを無駄なく利用できます。
あとは乾燥感という環境をどうするか・・という課題だけです。
繰り返しになりますが、ほとんどのハウスメーカーさんの住宅は乾燥するので、その乾燥感が「課題」というとらえ方もあれば、「一般的(普通)」というとらえ方もあります。
一般的と考えれば気にしなくていいことなのです。
ただ、今回の住宅は断熱性能がいつも以上に高いため、そこまでの熱を供給されると、室温が真冬でも30度超えをしてしまって、いわゆるオーバーヒートになってしまうのでは・・という恐れも考えられるのです。
この点について、先生・Iさん・K社さん含めて、いろいろな方法を議論しました。
いろいろな案が出されました。
最終的に 鎌田先生 と Iさん が いろいろなアイデアを出してくださり、次のような実験を行うことになりました。
テーマ 【 乾燥感の少ないソーラー集熱 】
実験手法① : 床下に蓄熱体を設けて、ソーラー集熱空気は断熱ダクトでそこまでもっていく。
実験方法② : 蓄熱体に熱を貯め込んで、余った空気は外部に捨てる(少しもったいない気分)。
実験方法③ : 夜間はその蓄熱体にたまった熱を室内に供給する
という実験理論です。
図にすると下図のようになります。
具体的な詳細図面でお見せしますと下図のようになります。
ここでひらめき発生!
私 「そうだ・・!。どうせ外部に捨てるのであれば、
その排熱をテラスタイルの先端を通して融雪に利用しませんか?
そうすれば、集熱エネルギーを最大限利用したことになりますし・・。」
Iさん 「それはうまくいかないんじゃないかなぁ・・」
鎌田先生 「意外とうまくいくかもよ・・」
実験とはこういうもので、研究者2人の意見が分かれるほど予想しづらいものです。
ただ、研究者の方の頭脳の深さは単なる当てずっぽうの予想ではないところがすごいです。
「失敗するなら、こういう空気の流れによる原因が考えられる」...とか、
「もしそうなったら、次はこういう工夫をすればうまくいくかもしれない」...というような、
失敗する場合の想定と、そうなった場合の想定もイメージしながら話すのです。
最後には、「失敗しても白鳥の家だから大丈夫だ・・」というオチもついてました(^^;)。
「乾燥感の少ないソーラー集熱」 への実験理論は決まりました。
できれば「乾燥感の無いソーラー集熱」と呼べるようにしたい、という期待もあります。
そういう空気環境バランスがとれるかどうか・・。非常にワクワクするポジティブな気持ちとドキドキするネガティブな気持ちの両方を抱くようなチャレンジでもあります。
次は、その蓄熱体をどういう「素材」にするか・・その蓄熱体にどういう方法で「空気を供給」すると蓄熱効果が最大限発揮できるか・・という点について、いろいろと議論がされました。
基礎工事進行中のため、本当に慌ただしい議論になりました。
つづく
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第23話:エコテクノルーフでのチャレンジ-その①-
ソーラーは三位一体ソーラーパネル(ソーラー発電+ソーラー集熱・実験的にソーラー給湯をプラス)で決まりました。以後、商品名「エコテクノルーフ」で記述いたします。
それがそのまま屋根仕上げ材なので、屋根も一体となり四位一体でしょうか(^^;)。
そして基礎工事もスタートしました。
6月の梅雨入りと同時に基礎はスタート・・(^^;)。基礎としては最も嫌な時期とされてますが、大丈夫!大丈夫(^^;)!
基礎工事スタート直後に、エコテクノルーフについて実験内容や施工方法の打ち合わせが持たれました。
その会議の問答の中で、着手中の基礎の仕様変更も出てくることになるのです。
単純にソーラーと思いましたが、その中には「面白い実験内容」と「わずかなリスク」もあり、私からの要望も入れて問答をしました。
それらをご紹介いたします。
実験①:屋根角度3寸勾配で雪が滑り落ちるのか?
今回の実験住宅は3寸勾配(10:3)です。
本当はデザイン的にもう少し緩く・・、2.5寸勾配(10:2.5)にしたかったところなのですが、
パッシブハウス認定を目指す過程で3寸勾配となったためです。
ソーラーにとっては少しでも急勾配のほうが真冬に雪が落ちるので都合はいいです。
しかし、3寸勾配というのは多くのソーラー発電では雪が滑り落ちません。 4寸勾配でもギリギリ滑り落ちないかもしれません。
しかも、北上市は岩手県内の中でも多雪地域であり、ソーラー発電は真冬に活躍しない状況が多いのです。
急勾配の大屋根デザインにすれば雪も滑り落ちますのでソーラーも働きますが、無理やり急勾配にしてデザインバランスの悪い家になっていることもしばしばあります。
今回は片流れデザインのため、できれば急勾配は避けたいという思いがありました。
北側の屋根を上げ過ぎたくなかったのです。
デザイン的に妥協できる限界が3寸勾配でした(出来ればもっと緩くしたいくらい)
ここから会議の内容を少しご紹介します。
会議には、「鎌田先生」 ・ 「私」 ・
ソーラーの研究者「 I さん」 ・ ソーラー集熱の研究販売元「K社さん」 で行われました。
何度か会議は開かれました。
私 「3寸勾配で雪って滑り落ちますかねぇ...。雪が滑り落ちないと、冬期間のソーラー発電は発電しなくなります。それは覚悟の上なのですが、肝心のソーラー集熱が全く作動しないと本当に無駄になってしまうので心配ですねぇ。」
I さん「3寸勾配は実績がないです。3.5寸勾配では滑り落ちることを確認しています。微妙な勾配ですが・・多分、大丈夫かなと思われます。」
ここからが面白い話です(^^)
I さん 「たとえ雪が積もっても、天気が晴れて太陽光パネルの表面が温まれば雪は融けます。
そうしますとその上にある雪は滑り落ちると思われます。
屋根一体ソーラーパネルのジョイント部分で、雪を滑りやすくする対策はしてありますので。」
私 「え・・?なんで雪が積もった状態で、その下にある太陽光パネルの表面の温度が上がるんですか?」
I さん 「太陽から出る赤外線の波長で遠赤外線は雪を貫通してソーラーパネル面まで到達します。
そうすれば、ソーラーパネル面の温度が上がり雪は融けます。
あとは、実験したことはないですが3寸勾配で滑るかどうか・・です。
一部が融けて滑り落ちれば、あとはソーラーパネルの裏面の空気が暖められるのでどんどん雪が解けていくと思います。」
私 「へぇ・・雪が積もっていてもその下には熱線が到達するんですね・・。面白い理屈ですね!。
3寸勾配で雪が滑り落ちたら、日本初の実績になりますね!
落ちるかるかどうか楽しみになってきました。
うまくいかなかったときは、メーカーさんとして3.5寸行勾配が限界ですと言えますね・・・。
滑り落ちてほしいですが・・(^^;)。」
実験②:落ちた雪の量の処理1
私 「この屋根面で雪が落ちたらすごい量の雪山になりますね...。リビングの窓に押し寄せてきそうです...(--;)。」
これについては、全員であ~だこ~だと議論を重ねました。
その結果・・
玄関ホールの南側もタイルで土間続きにした(下図オレンジ部分)ので、
そのまま延長してリビング前もウッドデッキではなく、タイル土間(黄色い部分)にすることにしました。
かつ、雪山が積もるだろうという位置と段差を大きくして雪山の多くが南に延びていくことを意図することにしました。
玄関前のテラス土間がそのままリビング前まで連続性もできるので空間的にもすっきりしますし、
落雪&積雪対策にもなるので一石二鳥で即決でした。
基礎工事進行中・・ぎりぎりで仕様が変更なっていくような綱渡りの状況がつづきます(^^;)。
このあとも、エコテクノルーフの会議で、とっても面白い実験が発案されてきて、
基礎の仕様が同時進行的に仕様変更していくのでした。
ある意味・・恐ろしいくらいギリギリのやり取りでした。
基礎やさんごめんなさい(^^;)。
つづく
【木の香の家 展示場 兼 実験住宅 物語は 5日 15日 25日 に何とか更新していきます。】
2回目の泣きです(;_;)。
プランニング業務が重なりすぎ・・と、出張続き・・、月末と重なって、体と頭がパンパンです(><)。
楽しみにしてくださっている皆さん申し訳ございません(><)
第22話:基礎工事スタートと 舞い込む実験
いろいろと七転八倒しながらも、着工ギリギリでなんと納得感を感じるプランに変わり、気持ちよく基礎工事がスタートしました。
「納得感を感じる」
こういう気持ちになれたことに救われた思いをしました。
この基礎工事では、いろいろな実験や測定が盛り込まれることになっていました。
○ 1つめは新しい断熱型枠の施工実験です(ビフォーアフターにも登場しました)。
(まるでレゴブロック基礎型枠)
強化された基礎断熱を省力化しながらできないものか・・という施工実験です。
数か月前から鎌田先生・東北資材工業(断熱型枠のメーカー)・私で、今回試験施工したい断熱型枠の改良版について会議をしておりました。
(断熱型枠改良会議の様子)
そんな会議の中で驚かされるのは先生の発想です。
例えばこんなやり取りもありました。
先生 「捨コンなしで断熱型枠を固定できないか?」
東北資材工業と私 「さすがにそれは無理じゃないですか?・・・。捨コンなしで型枠はパンクしますよ。」
先生 「そお?この断熱型枠のここをこう改良して、こうやれば捨コンなしでも型枠は立つんじゃないの?」
東北資材工業 と 私 「・・・」
「・・確かに・・できそうですね・・。」
断熱型枠をよく知り、現場の場数を踏んで、施工方法については自信のある私や東北資材工業さんでは思いつかないような・・斬新かつ理にかなった施工方法を、鎌田先生はいつも思いついたように話します。
このかたの頭の中はどうなっているんだろう・・と驚かされます。
今回の基礎ではそんな断熱型枠を使ってコラム式の基礎を施工する実験をすることになりました。
○ 2つめの実験は、なんと基礎工事開始と同時に先生から出された実験でした。
(三位一体ソーラー)
当初は某Kメーカーさんの屋根一体ソーラー発電にする予定で、東北電力さんにも申請が済んでおり売電価格も値下がりする前の価格で認可が下りていました。
そんな中・・数年前から鎌田先生とTaソーラーさんで特殊なソーラー発電を共同研究していたそうで、それがようやく試験設置できるところまで完成したという連絡が入ったそうなのです。
Taソーラーさんから、「そのソーラーを試験設置できる良い物件はないでしょうか・・」という問い合わせがあり、鎌田先生から私に連絡が入ったのでした。
先生「白鳥君さァ・・単なるソーラー発電乗せるなんて面白くないよ。今回、ちょっと試してみない?」
私 「え!?今からですか!?。既に設備認定も取ってますし、屋根の納まりもメーカーさんと何度も打ち合わせしているので、気が重いですねぇ・・」
先生「白鳥君家が、ちょうどタイミングがいいんだよね・・」
さすがに気が重かったです(それまでの他の方の努力を無にする感じがしたので)が・・そのソーラーの説明を聞きに仙台まで行き、実験好きの私にはぴったりのソーラーであることで・・、悩んだ末にその実験ソーラーに切り替えることにしました。
三位一体ソーラー
どういうソーラーかと言いますと・・
ソーラーというと一番初めに思いつくのは「ソーラー発電」だと思います。
次に思いつくのは「ソーラー給湯」だと思います。
そして、「ソーラー集熱」というものがあります。
同一屋根面でこの3つを同時に行う「屋根一体ソーラー」です。
もう少し詳しくご説明しますと・・
「ソーラー集熱」とは、太陽光によって屋根面にできた「暖かい空気層」を「暖房熱」として室内に取り込むということです。
私も初めて知ったのですが・・
ソーラー発電パネルの裏面では実は太陽熱で温かくなった空気が流れているのだそうです。
ソーラーで発電しながらそのパネルの裏面を流れている温かくなった空気を室内に取り込もうというのが今回の狙いです。
「ソーラー集熱」という言葉を知らない方でも「OMソーラー」という言葉を聞いたことのあるかたは多いのではないでしょうか。
では・・なぜ、鎌田先生が今まで見向きもしなかった「ソーラー集熱」に興味を持ったのかと言いますと、今回のTaソーラーのシステムがほとんどコーキングに頼ることなく、「金属同士のかみ合わせで空気が漏れない」という提案がTaソーラーさんから説明があったためです。
話によると、鎌田先生も20年以上前「ソーラー集熱」の実験を何度となくやったそうなのですが、集熱温度が高すぎて集熱パネルまわりのコーキングが数年で割れてきて漏気が始まるだそうです。
そこを何度となく工夫して実験しても結局は10年持たずに漏気が起こり、その漏気がどんどん増え集熱量も減ってしまうのだそうです。それでは商品化は難しいと判断して「ソーラー集熱」の研究をやめた・・という歴史があったそうです。
しかし・・今回のTaソーラー発電パネルは金属同士のかみ合わせによるものであり、これなら半永久的に「漏気のないソーラー集熱(集熱量が長い年月、安定して取れる)」になるだろう・・と判断し、いろいろな実験やソーラーの気密測定をTaソーラーさんと一緒に繰り返してきたそうでした。
そういう試行錯誤の歴史と、我が家の着工タイミングがギリギリ合ったことで、いつもの感覚で「これも流れかな」と思い、急きょ仕様変更をすることを決意しました。
それまでのKソーラーさんには、本当に申し訳なくお詫びをして了承をいただきました。
実験する項目がでると、それに付随する形でいろいろと新たな問題点や調整点が出てきます。そのやり取りもまた面白く、自分のスキルも上がる感じがしました。
それは次回ご説明いたします。
基礎工事をしながらギリギリでの基礎仕様変更も出てくるのでした。
つづく
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第21話:着工前1週間の変化
パッシブハウス認定は、どうやっても無理と言われ、腑抜け状態でお墓参りと鎌田先生へのお詫び行脚をしたのは、着工まで1週間と迫っていた時期でした。
それでも取得の方法は2つありました。
〇 1つは、壁厚700㎜にして3階建てにする。
〇もう1つは、昨今大騒ぎになっている数値の改ざんです。
前者は技術的に頑張る意味が薄いし、
後者は、ちょうど先週の全国ニュースにもなっている三菱車の燃費改ざんと同じように、
1回やってしまうと、私の家づくりの過去のものまで信用を落としかねないので姿勢としてやりたくない。
そういうことを考え、パッシブハウス認定取得はきっぱり諦めることを鎌田先生に報告しました。
鎌田先生は、「北上ってそんなに日射量悪かったっけ?クーラーさんデーター間違ってるんじゃないの?」とは言いつつも、
「ここまでやって無理なんだったら、もう諦めよ」・・とあっさりでした(^^;)。
そこからが先生の切り替えは迅速でした。
鎌田先生 「だったら、今まで諦めていたのを家づくりに戻したら。
バルコニーもびゅ~っと付けたらいいさ」
私 「確かにそうだ。バルコニーも小庇も無くしたから、夏に死にそうなくらい暑くなると思っていたし、
布団を干すこともできるようになるので、その方が快適で使いやすい家になりますね。」
1階の夏の日射遮蔽にも都合よかったので、1.2mの奥行きで東から西まで長〜くバルコニーを再設置しました(下図オレンジの部分)。
2階から景色のいい外にも出れるので、いろいろと生活イメージが楽しくなってきました(^^)
鎌田先生 「あとさァ・・こんな図面出てきたんだよ・・。
俺が15年くらい前に秋田で設計した家なんだけど、
その当時にこんな基礎断熱やってたんだ・・って、さっき見てたんだよ。」
そう言って、おもむろに古い図面を見せてくれました。
私はその図面を見たとき、基礎断熱の施工図より、プランニングの方に目が止まりました。
私 「先生・・。この図面、面白いですね・・。玄関に入っていきなりサンルームホールですか・・?。
先生ってこんな斬新な設計するんですか・・」
私は忘れかけていたものを思い出しました。
当初の設計コンセプトである「家の中に入ったら外?」・・という空間イメージを・・。
私が急に目の前が明るくなった感じを覚えました。
頭の中で玄関ホールの平面と断面そして南のデッキまでプランニングがぐるぐると回り始めたのです。
私 「先生、このプランニングのこの部分、パクらせてください!。
玄関ホールを大きな土間化します。
ついでに玄関ポーチから玄関ホールを通って南の庇まで天井を連続させて外と中の要素を連続させていきます!。
南側もウッドデッキではなく、土間テラスにします。
その方が連続性もありますし、雪で腐食を心配するよりいいので。」
【 下図:玄関を土間化してそのまま南の庭にも通り抜けれるように変更 】
【 下図 : 玄関ポーチの天井羽目板をガラス越しに連続させて、
玄関内部の土間天井・・そのまま南のテラスまで天井を連続させるイメージ図 オレンジの部分】
先生「今から間に合うの?断熱型枠も鉄筋も加工始めてるんじゃないの?」
私「そこも確かめますが、とりあえず図面化して明日にも送りますので、基礎の地中梁の構造計算も調整お願いします!」
私は、居ても立ってもいられず、とりあえず、図面の修正予定ポイントを先生に説明して、仙台から北上へと車を走らせました。
道中、型枠断熱の変更と鉄筋加工の変更を伝えて、
頭の中ではプランの変更部分をどんどん膨らませていました。
だんだん楽しくて使いやすい家になっていく感覚を覚えました。
パッシブハウス認定がNGと言われたことについては、人生を通しての本当の答えは見えていませんが、パッシブハウスがNGとされたことで、こんなに家づくりが面白い方向に進めるのか・・という感覚を覚えたことは確かでした。
よく鎌田先生が口にする 「無暖房住宅が世の中に10軒あるより、燃費半分で暮らせるキューワン住宅が1000軒あったほうが、環境のためになるよ」 ということも体感として理解できました。
パッシブハウスも無暖房住宅も、コストが掛かり過ぎる印象があり、一般のほとんどの方が建てられません。
それよりも、手の届く高性能住宅を提供したほうがいいんだな・・と感じました。
ちなみに、もし、我が家の最終仕様を壁厚700㎜にしてパッシブハウス認定を取ろうとしますと、キューペックス計算上で暖房負荷4.9kwh/㎡となります(確かに目標としていた5.0をクリアします)。
しかし、視点を変えると1年間の暖房用灯油消費量は119リットルとなります。
それまでの197リットル灯油が119リットルとなるので、約80リットルの灯油節約です。
1リットル100円であれば8,000円・・1リットルが昨今の50円であれば4,000円・・1年間に節約なるのです。
1年間で4000円~8,000円節約するために掛かる工事アップは、数百万円となります。
そういう視点からも、単に超高性能な家を提供するのではなく、
手の届く範囲で出来るだけの高性能な家を世の中に増やすことが大切なのだな・・と感じました。
こうやって、ある意味 足枷が無くなった私は、
短期間のうちに図面をガラガラと変えて着工に向かうのでした。
つづく
【木の香の家 展示場 兼 実験住宅 物語は 5日 15日 25日 に何とか更新していきます。】
第20話:パッシブハウス認定を目指しての奮闘記 -その9- パッシブハウス認定の可否
パッシブハウス認定を目指した資料をドイツに送って2週間以上が経ち、着工まで約10日と迫っていました。
パッシブハウス認定が可能なのか、部分的な修正が必要なのか・・その修正は基礎にも影響するのか・・、明解な回答がないモヤモヤ感を持ったまま、新型の断熱型枠や鉄筋の製作が始まろうとしていたギリギリのタイミングでした。
ようやくクーラーさんから国際電話が入りました。
私:「お久しぶりです。全然連絡が取れなかったんで心配してましたよ・・」
クーラーさん:「すみませんでした。PHPPで計算したり、パッシブハウス協会の方と相談したりして時間が掛かっておりました。」
私:「それで、パッシブハウス認定を取るために、どこか調整が必要なポイントは出ましたでしょうか・・?」
クーラーさん:「順番に説明しますので聞いてくださいね・・」
クーラーさんは、少し考えたように間を取ってゆっくり説明を始めました。
「まず、パッシブハウス認定ですが・・」
「今回はどうやっても取れません。ごめんなさい。」
私:「 ・ ・ ・ 」
クーラーさん「理由としましては、北上市は予想した以上に冬の日射量が少ないです。」
「私も、太平洋側なのでその点は心配ないと思っていたのですが、日本の気象庁のデーターでも、思ったより日射量が取れてないのです。」
「本当にごめんなさい。最初の段階で、北上市の気象データーをしっかりと見るべきでした。」
私:「・・、北上市ってドイツよりも厳しい環境ということでしょうか・・」
クーラーさん:「そうかもしれないですね・・。
ただ、認定を取れる方法もあるのですが・・非現実的です。
PHPPで計算してみると、壁の断熱厚さを700㎜にするとか・・
基礎の高さを1m以上にして床面積を増やすとか・・。
でも、ナンセンスですね。」
私:「そうですね。それはさすがにコスト的にも技術的にもやる意味が薄いですね。」
私:「そうでしたか・・。でも、スッキリしました。
今まで、どんなことをやっても答えに近づかなかったので、おかしいとは思っていましたので・・。
いろいろとシュミレーションしていただきまして本当にありがとうございました。」
電話を切った後・・私は、強烈な脱力感を覚えました・・。
スッキリしたという気持ちも確かにありましたが・・努力が報われないという結果に、自分の「人生の流れ」が変わったのでは・・という不安も感じ始めました。
言葉でなんと表現したらいいのかわからないほど、
とにかく仕事をする気がなくなり、家で悶々としていました。
無駄な努力は無い・・という価値観を持っている私です。
パッシブハウス認定を取ろうとして、かなりの労力と精神的にノイローゼになるくらいの日々を過ごしたことに何か意味があるのという事なのだろうか・・、
それとも、やはり人生の流れが悪い方向に変わっていく兆しなのだろうか・・。
自問自答しても答えを悟ることが出来ず、翌日・・仕事を休んで、ご先祖さまへのお墓参りと、HAさんのお墓参りと、鎌田先生へのお詫び行脚をしました。
鎌田先生にも、性能値を上げるためのアドバイスを何度ももらい、Q-PEXでの性能アップのコツも相談させていただいていたので、パッシブハウス認定を取れないということの報告も兼ねてのごあいさつでした。
家づくりの大きな目標の1つを失いパワーも失いかけた私でしたが、
なんと・・このあいさつ行脚で、もう一度パワーをもらえるような展開が起こるのでした。
つづく
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