ACT7 N建設にて -再び漫画のペンをとる-
N建設でのはじめての現場は、会社を飛び出して現場事務所へ出勤するというRC構造の小学校建築でした。初めての現場でしたが、大きくてわくわくした記憶があります。
その現場では、毎日たくさんの職人さんが作業にきました。1日30人~50人という数の職人さんが来る日もあり、にぎやかな毎日を過ごしました。
その日々の中で、私はいろんな職人さんと仲良くなり、そしてその職人さんの数人から言われた記憶に残る言葉があります。
白鳥君・・、最初に付いた上司が【E工事長】でよかったな・・。
E工事長はトップダウンでなく、職人さんや部下の意見をよく聞いてくれました。また、指示待ちを期待せず、「考えること」「アイデアを出すこと」を重要視していました。おかげさまで、初めての現場にもかかわらず、いろいろと遠慮することなく聞けましたし、遠慮なくいろいろなアイデアを提案することもできました。
予算がなくて2人で現場を切り盛りしなければならなかったことも、逆に色々と役割をあたえられる環境となり、私自身のその後のステップアップには、恵まれた環境だったと思います。
この現場で、まさかの面白い展開が起きました。
ある日、N建設の専務に呼び出され、次のように言われました。
「俺が執筆している建築雑誌の1ページに現場マンガを連載してみないか?」
思わぬ提案で喜びたい依頼でもありましたが・・
初めての建築現場の上に2人で切り盛りして忙しく、
とても時間が取れない・・(ーー;)。
現場で描こうにも新入社員の私がそんなことをお願いできるはずもない・・。
でも、何かのチャンスのような気もする・・。
ん~・・どうしよう・・(ーー;)
もともと前向き思考の私は、思い切ってE工事長に相談してみました・・。
ここで、E工事長から驚きの答えが返ってきました・・。
「白鳥君・・マンガを現場で描いていい。
そのかわり、出来上がったら一番最初に俺に見せろ。
面白くなかったら、描き直させるから」。
「え・・!いいんですか!?・・(@@;)」
予想外の返事に、正直、驚きました・・。
こんなことをすぐに快諾してくれる上司って、ちょくちょく居るのだろうか・・
それとも、かなり稀なことなのだろうか・・
その後わかったのですが、E工事長は若いころ映画監督に本気でなりたかったらしく、こういう創作活動には理解力があったのです。
これもあとでわかったことなのですが、E工事長以外の上司の方であれば、規律正しい性格上・・誰一人OKを出さなかっただろう・・ということは明らかでした。
そのほうが普通なのですが・・。当たり前です・・(^^;)
こんなラッキーな偶然も重なり、すっかりあきらめていた漫画のペンを2年ぶりに握ることになりました。これも、「流れ」なのだろうか・・。偶然の重なりとはすごいものです。まさか、それから20年たった今でも描き続けることになり、間接的にも仕事になるとは、その時はもちろん思いませんでした。
*【流れに従って生きる】は毎月1日に更新していきます*