ACT21 「木の香」誕生
Cホームへの会社訪問で、どど~んと沈んでしまった私は、家に帰ってからかなり悩みました。
進むべき道という「流れ」は感じる。でも、あの建物は売りたくない・・。このまま黙って入社したら、売りたくない建物をつくり笑顔で売って歩く営業マンにさせられてしまう。
悶々とした状態で過ごしました。
いっそのこと入社を断ろうかとも考えました。
その数日間、悩んだ挙句、私が出した答えは・・、
入社前に自分の売りたい建物の商品を提案する・・ということでした。
入社前に提案書を書くという大胆な行動なだけに、表面的な家の仕様を語る 三流評論家みたいな提案書ではマズイと思い、かなり気合を入れる覚悟をしました。
そこで、私はいろいろと考えて 以下ののようなものを 準備しようと決めました。
① 商品コンセプトとターゲットとなるお客様の層
②:その商品が、市場で売れると思う理由
③:標準仕様
④:総2階40坪での工事原価
⑤:1階面積:2階面積=5.5:4.5比率での工事原価
この工事原価は、大工さんの作業を分解して、土台大引き敷き何人工・建て方何人工・床貼り・サッシ付け・内装ドア付け・ボード貼り・廻り縁、幅木付け・和室1室造作割り増し人工が何人というとこまで算出し、極力、原価根拠を明確にしました。
⑥:販売価格(坪単価)
これは、大手ハウスメーカーの手法に習って、坪単価を安く見せるために付帯工事やオプションにまわせる項目はまわしました。
⑦:粗利率
これらの資料作成には、かなりの日数を費やしましたが、用意した資料の中でも、④・⑤は自分自身の勉強にもなりました。
N建設に一番欠けていたのがこれなのです。④・⑤(工事原価)が根拠になって算出される⑥(坪単価)が言えなかったことが最大の弱点だったのです。
いつも、お客さまから「大体、坪単価いくらくらいで出来るのですか?」と聞かれると、即答できず「仕上げによりますから・・」とお茶を濁すような返答しかできなかったのでした。
もちろん自由設計で、主に設計事務所さんの仕事をこなしていたN建設にとって、1回1回仕様が違うし、住宅の形状も複雑なものが多かったのですから、坪単価とは拾わなければわからない・・というのは正論であります。しかし、ハウスメーカーに居たO君にとっては、時代遅れの会社にしか見えなかったらしく、「それくらいのこと即答できなければ、ハウスメーカーにさっさとお客さんを持っていかれるよ」というのでした。
お客さまの立場になって考えてもみても、「打ち合わせしてからの見積もりでは、どんどん予算オーバーになっていくのでは・・」という不安になります。
契約後の打ち合わせで仕様が変わってもいいから、スタートの標準仕様と総2階パターン・1階が少し大きいパターンでの価格を計算しておかないと営業にならないというのでした。
このことを思い出して自分で考えた商品を計算してみましたが、これが、かなり役に立つことを肌で感じました。
仮にお客さまから45坪くらいの広さ・・と言われれば、
45坪に、ポーチやバルコニー、吹き抜けを加えておいて○○坪くらいで施工面積を考えておきましょう。
↓
坪単価△△なので、掛け算して□□円・・。外部給排水工事など付帯工事を加えて、合計おおよそいくらになります。
↓
お客様の年収と自己資金から計算しますと、借り入れは問題ないと思います。
↓
それじゃ、プランニングでの、ご希望を聞いていきましょう。
↓
・・と、会話の流れが頭に浮かんでくるのでした。
自分の頭の中で、「商品アピール」・「価格の即答と競争力」・「営業トーク」・「利益の確保」がひとつにつながったことで、これは、行けるという自信ができました。
そして、それらを提案書としてまとめたのでした。
その家は・・、杉の30㎜の厚板を 建て方のときに斜め天井に貼って、その外側から厚い断熱材を一気に設置するという施工方法で、仕上げが山小屋風、施工手間を軽減しながら断熱性能を上げるという工夫が盛り込まれていました。
(実際の施工写真)
ここに、私が考えた初の商品「木の香(このか)」が誕生したのでした。
「木の香」 代表的な内観写真
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