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【 流れに従って生きる ACT38:HAさまの突然 】

 

ACT38 : HAさまの突然

 


HAさんが亡くなった?・・・。

 

 


・・・・

 

 


 朝の突然の電話に、私たち3人はどうしたらいいのか呆然としました。

 

 何をすればいいのか・・どう動けばいいのか・・あまりにも突然すぎる内容の電話と、社会人としての未熟さも重なって・・まったく動きが取れませんでした。

 


HAさんの知人で今回の工事にも携わっていただく業者さんからも電話が入りました。 

「大変だ!HAさんが死んじゃった・・・」

 

 


真っ白な頭の中、虚脱感、動揺と・・とにかく何をしたらいいのか分からず混乱していました。

 

 

ご法事の話もありましたが、会社がつぶれる可能性の話もありました。


 その時点で、HAさんの工事の規模が大きかったため次の物件は探しておらず、この現場のためだけに詳細図作成や発注業務・工事の段取りなどに全員のパワーを注ぎ込んでいたのです。海外からの材料も発注済みだったりと・・キャンセルできない多くの資材もあり、資金繰りの危険性も同時に頭をよぎっていました。

 


 何から手をつけたらいいのか迷いました。

 

 


 Ho建材の部長さんが事務所に来て、落ち着きを取り戻したのは2時間後だったと思います。

 

 

 M部長さんのアドバイスで、とりあえず、一番お世話になっていた牧田と社長E氏は線香あげに向かう。

 私は会社に残って、何かの連絡待ちと海外に発注した建材関係のストップ、各業者さんへの工事中止の連絡をすることで手分けして動くことになりました。

 

 M部長さんのアドバイスが無ければ、1日中、何をしたらいいのか迷い続けたほど、私たち3人は社会人としてヒヨコなのだと感じさせられました・・・

 

 

 


 私は、「なんでこんな流れになってしまったのだろう・・。俺に守護神がいるのなら、何のためにこんな巡り合わせにしたのだろうか・・」と、混乱した自分を納得させるような答えを探しつつ、各業者さんに電話を掛け始めました。

 

 


 そして、電話を掛け始めて2~3件だったと思います・・。

  

突然、会社の電話が鳴りました。
 
 

 

直感で「もしかしてHAさんの奥様?」・・と思い、受話器をとりました。
 
 
 

 

 

「もしもし・・、HAです。」
 

電話は・・亡くなられたHAさんの奥さまからでした。

  

 

 

 

 

「あ・・こ・このたびは・・、」突然の電話に私は声がつまってしまいました。

 

  

 

HAさま 「驚いたでしょう・・」

奥様の声は、不思議なほど・・、驚くほど・・穏やかでした。

 

 

 

「え、ええ・・。あ!今、工事中止の電話連絡を各業者さんにしていました。」
  

 

 

「それなんですけど。工事は続けてください。大丈夫です。お金はあります。」

口調は、しっかりしていました。


「それだけお伝えしたくて。それじゃあ。」
  

 電話は切れました。

 

  

・・・・

 

 

とても、昨日、ご主人様を亡くしたとは思えない気丈かつ穏やかな振る舞いでした。
 

  

 

こんな状況で、今のような内容の電話をするゆとりが なんであるのだろうか・・

私が逆の立場だったら、出来るだろうか・・

 

 


奥様からの電話に、私は人生を救われた思いをしました。

 

 


そして受話器を置きながら涙を流していました。

 

 

 いままでのHAさんとのお付き合いの中で、背景は想像ができました。

 いまでも憶測の範囲ですが、多分お亡くなりになる前に、HAさん自身が自宅工事の続行を指示したのだと思います。そして、奥様はうちの会社だけでなく、いろいろな牧場事業に携わる会社さんに同じような電話をしているのだと・・。


 会社を興すことの難しさ、始めた事業を止めると多くの人に迷惑がかかること、そのほか、私には分からない色々なことを含めて考え、家づくりの続行を指示して亡くなられたのだと想像がつきました。

 

 

HAさまが言葉にしていた「次の世代」という言葉の重さを痛感させられました。


HAさんの精神に報いなければならない・・という責任感も沸いていました。

  

 あとで知ったのですが、HAさんは、数日前に死の告知を受けていたそうです。そして、数日間という余命の間に、会社の重要な人、畜産協会の関係者、縁のあった人に、そして家族にそれぞれ今後の指示と遺言を残して、「あとは任せたぞ」とお亡くなりになられたということでした。

 

 

 HAさんの葬儀は、町葬という規模でした。

 

 町長はじめ多くの著名人、海外の賓客、一般の町民の方まで町の大ホールに参列していました。

 

 どれだけ多くの人たちの幸せのために尽力してきたのか・・計り知れないほどの想像以上の大葬儀でした。

 

 人生そのものを救われた大恩があるので、私と牧田は葬儀の最後まで居るつもりだったのですが、E氏は「線香もあげたし、そろそろ会社に帰ろっか」と言ってきました。

 

 

 こいつ(E氏)と一緒ではHAさんの精神は継げないと確信した瞬間でもありました。

  


*【流れに従って生きる】は毎月1日に更新していきます *

 

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Posted at: 2016.12. 1(木)

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