ACT43 決心
T大工さんの「俺、その仕事やらない」の一声に、私はびっくりしました。
私「え・・何かあったんですか?」
明確な理由が分からない私は、こういう聞き方しか出来ませんでした。
T大工さん「白鳥さん...、なんであんな奴と組んだのや?」
「俺は大工だけど、人を見る目はそこそこ持ってるぞ。」
「あれは『人を疑う目』だ。」
「俺の目を見ながら、俺が何を考えているやつなのか・・探りながら会話してた。」
「白鳥さんの仕事はしたいが、あいづの仕事はしたくねぇ。」
「白鳥さん、あいづと別れろ。1人でもやれるはずだ。そのときはいぐらでも手伝うがら・・。」
その話を聞いて、私は心の中ですぐに決心がつきました。
T大工さんが一目で嫌になったのなら、この会社に居ても何の恩返しにもならない。
会社を辞めよう
独立して3人で組んでから半年も経たないうちの決別です。
みっともない気もしましたが、これだけ一気に「流れ」が来たのなら間違いないだろうと・・割り切って考えるしかありませんでした。
一晩、布団に入りながら「決心」について自問自答もしましたが、1回目の独立とは違ってスッキリした気持ちになり、あっという間に心の整理がつきました。
もちろん、なんの保証もない無謀な行動ではあります。
約束された仕事は全く無く、動かせるお金も20万円~30万円の貯金しかない状態での再独立なのです。
すぐに「廃業」・・もしくはどこかに「再就職」ということも考えられました。
・・ですが、一連の出来事がこれだけ重なって、岩手への吸引力がここまで高まっているのであれば大丈夫だろう・・という「根拠のない自信」だけは消えることはありませんでした。
翌日から密かに、新住協の会沢さんにも相談に乗ってもらったり、私を信頼して会社の監査役になってもらったSさんにも ご説明 と お詫び をしに行きました。
お2人の意見は同じでした。
「やっぱりな。なんであの人と白鳥君が組むのか理解できなかったよ。まだ、若いんだから問題ないんじゃない」というお返事をいただきました。
会沢さんのアドバイスで、表向きは結婚するという理由で岩手に戻ることにして、菅原さんにお願いして家づくりを初の物件にさせてもらえば数か月は細々と食べていけるのでは・・いう道筋がなんとなく見えてきました。
HAさんの物件は未完成でしたが、私の担当である「性能確保」までは終えているので、あとは牧田に任せても問題ないくらいに進んでいました。牧田にも事情を話し、少し困ってましたが・・納得してくれました。
HAさんの精神は、私が自由にやったほうが受け継ぐことができる・・という考えも再独立の気持ちを後押ししてくれました。
そんな道筋が見えるのにあまり日数は掛からず、わずか2~3日で「お詫び行脚」と「どうやってスタートを切るか」の整理がつきました。
そして、私はE氏に会社を辞める話をすることになるのです。
そこからこの物語は信じられないような展開となり、怒涛のクライマックスへと動き始めるのでした。
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