第5話:土地が呼んでいる? その③ -実家の火事-
「実家が火事!? ホントですか!?」
一瞬、頭が真っ白になりました。
私「どの建物が火事なんですか?」
Sさん「茅葺の建物だって!」
私 「おふくろ と 親父は 大丈夫なんですか?」
Sさん「ご両親さんは大丈夫みたいだけど、すごい火が出ているみたいだよ」
いつも日曜日は打ち合わせなどで予定が埋まっているのですが、この日の日曜日は珍しく予定が空白で、長男をサッカーの練習試合に送って自宅でのんびりしていたのでした。
そんなすぐに動ける状態だった私は、 かみさんと娘が帰って来るなり、実家に車を走らせました。
しかし、不思議と・・「精神的に急ぎ慌てる」・・という感じではありませんでした。
私は、いろいろなことに頭をめぐらしていました。
私の実家は、江戸時代頃に建てられた築150年くらい前の「かやぶき屋根の家」と、「昭和に建てられた家や納屋」が3棟くらいある農家のような感じでした。
その150年経った「かやぶき屋根の家」は、私も小さいころ部屋にして寝ていた建物なので、思い出もたくさんあります。
土地を買って新しい家づくりをする際、実は、心に引っかかっているものがありました。
それは、この「かやぶき屋根の家」なのです。
150年の歴史を考えると、その歴史の重さに、解体することはかなりのプレッシャーなのです。
ご先祖様や多くの親戚のことを考えると、壊すに壊せないというのが正直な気持ちなのです。
しかし、かやぶき屋根を定期的に葺き替えるには、かなりの費用負担があり、とても維持できない。
兄貴は東京、私は岩手、妹は仙台で生活の拠点が出来ており、後を継ぐ者もいない。
「かやぶきの家」が放置されてボロボロになるのを見て見ぬ振りもできない。
土地を買って実家でない場所に住むとなった場合「実家のかやぶきの家はどうなるの?」というのが、いつも かみさんと話に出るのでした。
もちろん兄弟間でも、あの実家はこれからどうすればいいんだろう・・という話は以前から出ていました。
150年間、一度も火事が起きていない建物が、土地を探しているこのタイミングで火事が起きるなんてあり得るのだろうか・・。
そんなのは宝くじに当たるような確率の話だよな・・。
周辺の建物に延焼しているかどうか分かりませんでしたが・・不思議と、「もしかすると、この火事は、『起こるべくして起こっている火事』なのではないだろうか・・」と、感じてしまうほどでした。
他にもこの火事に絡む話があり、そんな会話をしながら実家に車を走らせました。
とりあえず、8月1日の 土地Bの地主さんに会いに行く気持ちだけは、さすがに消えてしまいました。
つづく
【木の香の家 展示場 兼 実験住宅 物語は 5日 15日 25日 に何とか更新していきます。】