第28話:20年前の約束
基礎工事もギリギリに変更を繰り返しながらも、なんとか「実験工事」・「測定センサー設置」も含めて完成しました。
基礎は終わりましたが、木工事開始まで1か月ちょっと空きます。
理由は、今回の木工事は当初から大工さんが決まっていたからです。
担当大工さんがいつから決まっていたのかと言いますと・・、
20年前からです。
20年前、私はN建設に勤務するペーペーでした。
もちろん、その当時から断熱気密については、勉強しながら知識を増やしておりました。
そして、その大工さん(T大工さん)は、N建設ではなく別のハウスメーカーに所属する大工さんでした。
何故、そんな別のハウスメーカーに所属するT大工さんと接点があったのかといいますと、N建設の物件が重なったときに大工さんが不足してしまい、そのハウスメーカーさんから助っ人として一時的にお借りしたのでした。
N建設時代・・、私の記憶では、T大工さんと現場を一緒にしたのは、その1物件だけだったと思います。
その現場を進めている間のお互いの印象はこんなものだったと思います。
(私のT大工さんに対する印象)
〇 難しい仕事でも丁寧にこなして、自信満々でありながら低姿勢な大工さんだなぁ・・。自分の意見をどんどん言う大工さん。
(T大工さんの私に対する印象:あとで聞いた話)
〇 普通は、自分(T大工さん)が「こうしたほうがいい。こんな感じで施工する」と意見をいうと、ほとんどの現場監督は「はい。お任せします」と言う。
こいつ(私)は、まだ若いくせに「それはお任せします。でも、これは断熱の観点から、こういう感じで施工してください。」と自分の意見を持ってくる。
その割には、下請け業者に対して偉そうにしない。
〇 現場のごみ運びや、雑作業など、普通の現場監督が嫌がる作業も気にしないでやっている。
こんな感じです。
そんな現場での木工事は、きれいに施工したいT大工さんの意見と、断熱理論をきちんとしたい私の意見をすり合わせながら、がっぷりよつで進んでいきました。
終盤にはこんな会話が出るほど、私とT大工さんは仲が良くなっていました。
T大工さん 「白鳥さんは、いずれ独立するタイプだな。」
私 「え?俺が独立するんですか・・? 今のところはイメージが出来てませんね。」
T大工さん 「間違いなく独立する。」
私 「いつか独立したいなぁ・・という思いはありますが・・」
T大工さん 「そのときは、俺が手伝ってやるから声かけて。この現場終わっても、俺の現場にちょこちょこ仕事を見に来てよ。俺の仕事ぶりが分かるから。」
私 「見に行っていいんですか?それじゃ、面白い現場があったとき一度ご連絡いただけませんか!」
T大工さん「それと白鳥さんが自宅を建てるとき俺がやってやるから。」
私「ホントですか!?それはお願いしますね!。」
その当時は、仙台から150kmも離れた岩手に来るとは夢にも思っておらず、仙台のどっかに家を建てるのだろう・・と思っていました。
T大工さんとは、その後、仕事を一緒にすることは無かったですが、T大工さんがやっている某ハウスメーカーさんの現場を見に行ってその腕の良さをますます知ることになったり、断熱施工的な意見交換をしたりする機会があり、なんとなくつながっていました。
たった1つの現場をいっしょにやっただけで「白鳥さんは絶対に独立する」と言い切ったT大工さんは見る目があったということなのでしょう。今思えば、すごいです(^^;)。
そして、私が本当に独立するときも相談したりして、独立後、本当に私の現場を手伝ってくれるようになりました。
独立して約13年も経ちました。
ようやく自宅を建てる機運が高まり、そんな我が家の家づくりの約束をしたのは約20年前・・。
私「我が家の木工事に、岩手まで来れますか(^^;)?」
T大工さん 「仕方ないなぁ・・。20年前の約束だから・・。」
つづく
【木の香の家 展示場 兼 実験住宅 物語は 5日 15日 25日 に何とか更新していきます。】