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木の香の家 展示場 兼 実験住宅 建築物語 第29話: 壁パネル化実験と不思議な30分間

第29話:壁パネル化実験と不思議な30分間
 

 建て方が徐々に近づいているころ、この実験ハウスでは建て方の方法についても新しい実験を計画しておりました。

 それは、分厚い断熱壁の「大型パネル化」です。

 

 300㎜断熱という超高断熱住宅で、壁をパネル化して現場の工数を減らせないかという挑戦です。

 

 この壁パネル化の主な目的は下記のような点です。

 

①  付加断熱をするようになってから、時々お客様に「なかなか外壁工事になりませんね」と言われます。
 大工さんの視点から見ますと、家2軒分の断熱をするので手間が掛かるのは仕方がないとなるのですが、多くのハウスメーカーさんは建て方が終わると、すぐに外壁施工を始めるため、比較するとやはり進みが悪いように見えます。
 その点の解決策にならないか・・。

 

②  トリプルガラスになってからサッシが非常に重く、2階に大型サッシがあるとそれを持ち上げるだけで重労働となってきています。それを壁パネル化してサッシを組み込むことで、現場の重労働を軽減できないか・・。

 

③  今回は、大型木製サッシを4台設置します。そのサッシの重さが一窓=200kg超もあります(@@;)。
   そんなサッシを現場で施工するのは非常に重労働になるため、この木製サッシをパネル化することは現場の安全面と現場スピードからも必須と考えました。

 

④  そして、200㎜付加断熱(300㎜断熱)のパネル化の可能性を探ろうという目的もあります。

 


こんないろいろな目的がある実験だったので、基礎工事中にパネル化の詳細図面と工場との打ち合わせを重ねておりました。

(壁パネル製作の様子:90㎜付加断熱時)

壁パネル①.JPG

壁パネル②.JPG


 そして、建て方2週間前には壁パネル製作も始まり、新住協のメンバーや業界新聞社も含めて多くの方々に建て方時の予定表を配信していました。
 ○月○日 土台式 ・ ○月○日1階壁パネル設置 ・ ○月○日2階壁パネル設置 ・ 見ごたえのある日は〇月〇日 など・・取材に適した日程まで書き込んで連絡済でした。


銘打ったのは「300㎜断熱の大型パネル化」に挑戦です。

(大型パネル化のために作図した図面の一部) 

壁パネル図1.jpg 

壁パネル図2.jpg 


 全ての手は打った・・と思い、時々パネルの進捗を見に行ったり、大工さんと建て方後の作業について詳細打ち合わせをしていました。

 

 

そんな建て方開始10日前でした。

 

 夜8時ころだったと思います。

 

 突然、予想もしなかった電話が入りました。

 

 


 パネル工場からでした。

 

 

 パネル工場担当Sさん 「白鳥さん・・。すみません。建て方を1週間ずらしていただけませんか・・。厚壁パネルが予想以上に時間が掛かることがわかり、とても建て方に間に合いません。」

 


    私   「え!・・。それは困ったなぁ・・。もう、メールでもフェイスブックでもたくさんの人や報道関係の人にも作業工程表を送ってしまっているんですよ。クレーンも日程をおさえてますし・・、その後のソーラー作業の日程もおさえてあるんですよ・・。」

 

   Sさん 「厚い付加断熱下地の無いパネルであれば間に合いますが、どうしても付加断熱部分の作業が、90㎜厚のときと比べて200㎜厚でこんなに作業性が違うのかと思うほど時間が掛かるのです。木製サッシを組み込むのも予想以上に大変ですし。」

 

   私 「困ったなぁ・・。あまりにも多くの人に告知してしまったので、いまさら『パネルが間に合わないから1週間ずらします』って格好悪いなぁ・・。」

 

   Sさん 「付加断熱下地なしで進めますか・・。」

 

   私 「それもそれで、『せっかく厚い断熱パネルを期待して見に来たのに』 となりそうだなぁ・・・」
 

 

   Sさん 「困りましたねエ・・」

 

 


 私は、既に告知した作業日程を優先して付加断熱下地なしの普通壁パネルにするか...、

厚壁パネル実験のために日程をずらすか...

悩みに悩みました。

 

 


 一度電話を切って、T大工さんにメールをしました。

 

 私のメール  「付加断熱下地・・パネル化しないで現場作業でいいですか?」

 

 T大工さんのメール  「いいよ」
 

 

 私は、多くの人の予定を変更するには大義名分が無さすぎると判断し、厚壁実験をやめて普通の壁パネルで建て方することを選択しました。

 

 これで、新聞取材の意味もなくなり話題性の乏しい建て方になるのは決まり、わざわざ見に来る人にとっても、見る意味の少ない建て方になることは明白でした。

 

 

 

 私はパネル工場担当のSさんに電話しました。

 

 私 「厚壁パネルをやめましょう...。とても、パネルが間に合わないから建て方を1週間ずらします...とは言えないほど、いろいろな段取りをしてしまっているので・・。」


 Sさん 「申し訳ございません...。それでは明日から、普通パネルで作業を進めます。」

 


私は電話を切った後、心の中で「がーーーン(--;)」と呟いていました。

 

 

 

 私の心の中「せっかくあれだけパネル図を作って、打ち合わせも重ねてきたのに、ほぼ無駄になってしまった・・(--;)

 この家づくり・・流れがいいのか 悪い流れに乗っているのか 判断に困ることが多いなぁ・・。どっかで大きな落とし穴があるのかなぁ・・」と心配する気持ちでモヤモヤしていました。


 土地探しからの流れはいいと思えば、パッシブハウス認定はギリギリで足元をすくわれ断念。
何かが引っ掛った気持ちになり・・、しかし、そのおかげで暮らしやすいプランに急変し「怪我の功名」と思えるようになりました。
基礎工事中はギリギリで新しい実験工事が間に合ったかと思えば、せっかくの厚壁実験はギリギリでNGとなる・・。

 

 
 私は、人生の流れが変わることだけを恐れています。

 


 いい流れなのか悪い流れなのか判断できないこれらの二転三転の出来事に「どういう流れなんだ」・・と自問自答して家づくりは進むのでした。

 家づくりは、現場の状況で図面からの調整が必要になることはしばしばあります。自由設計で、なるべくお客様のご要望に「無理です」と言わない家づくりを進めているので、そういう現象が起きます。それが「怪我の功名」と思えると安堵し、そう思えないとストレスがたまるものだなぁ・・・と自分の家づくりを通して感じます。

 


 私の場合は、最後は、「人間万事塞翁が馬」という哲学を持っているので、その起きた現象から何かプラスになる要素を見つけようとします。

 しかし・・今回の厚壁パネルの施工実験断念はモヤモヤ感が強いものでした。

 


 そんなパネル工場担当のSさんと30分間の悶々とした電話のやり取りのあとでした。

 

 T大工さんから突然電話が入りました(おおよそ夜8時30分)

 

 

  


 それも、つい先ほどの電話内容よりも、はるかにびっくりするような電話内容だったのです。

 

 

  

 

 

T大工さん 「白鳥さん。わりィ(><)。建て方1週間ずらしてくれ!」
 
 

 

 


 
つづく

 


【木の香の家 展示場 兼 実験住宅 物語は 5日 15日 25日 に何とか更新していきます。】

 

 

Posted at: 2016.8.25(木)

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