はじめに
当社HPをご覧の方から、「外壁面を使ったパッシブソーラー理論の項目をもう一度見たい」・・というお話が何件かありましたので、修正をかけまして、改めて掲載いたしました。
「外壁面を使って【パッシブソーラー】をアピールする工法」は、住宅業界には5~6種類くらいあると思います。その中には、理論的に納得のいくものもありますが、私たちプロから見ると、眉唾な理論に聞こえるものもあります。
ただ、一般の方は、漠然とした工法イメージ図だけを見せられますので、どれも同じように受け取ると思います。
その違いと注意点を考察して行く目的で、このコーナーを復元いたします。
はじまり~はじまり~(^^)
「南側の外壁で通気層の空気が暖まり、その空気が家のまわりをぐるぐるまわって、家を暖めてくれる」。
住宅業界では、よく耳にする、さわやかな営業トークです。
さて、皆さんは、この『ぐるぐるまわる暖かい空気』とは『何℃くらい』をイメージするでしょうか?
なんだか・・ものすごい効果があって、さわやかで、燃費の掛からない
太陽の光だけで暖かくなる「自然の魔法の家」を想像させられてしまいます。
今回は、それを調べるために、「実際に建てられた家」と、「実験台」を使って実測してみました。その結果をレポートとし、考察を加えたいと思います。
○ 通常、暖かい空気は軽いので上昇する・・のですが、本当に暖かい空気が北側の外壁と接触しながら暖かさをキープして土台まで到達するのか疑問に感じていたため。
○ この手の工法で建てられた家が、イメージとは違い「寒い」という報告が多く聞かれるため、原因を調べたい。
○ 北側の外壁の土台付近で、結露して外壁下地材が腐っている現場を見たことがあるため、原因を調べたい。
○ 南側の外壁を通じて、通気層の空気が冬にどれだけ上昇するのか興味があったため。
○ 室内の空気を出し入れするタイプだと、室内の空気が通気層に出て、密閉された場合、夜に冷やされて外壁内部結露していないのか知りたい。室内の空気は20℃で湿気も多く含んでいるため、ちょっと心配。
以上のような目的で、実験・測定を行いました。
<イメージ図を見てみましょう>
「図A」と、「図B」は、この種類の工法でよく使われる説明図です。
はじめに「図A」についてですが、これは、あくまでイメージ図ですので、各部位を拡大して物理的に考えてみましょう。
<物理的に考えてみましょう>
まず、一般の高断熱高気密住宅で基礎断熱すると、床の上に暖房機がある場合で、床下の温度は冬の間で13~15℃をキープします「グラフ1」。この場合、床では断熱施工しておりませんので、室内の暖かさが床下に影響していることも要因の1つです。
「図A」では、床で断熱施工をするため、室内の暖房の影響は受けにくい構造ですので、一概に「グラフ1」の結果をそのまま適用するわけにはいきません。しかし、「暖かい空気がぐるぐるまわる」という説明ですから100歩譲って床下の温度を10℃と仮定してみましょう。
「図A」を拡大した下図をご覧ください。
<重要なポイントは、南側と北側の外壁の温度が何℃なのか?・・です。>
○ 自然の法則では、熱は高い方から低い方へ移動します。
○ 外壁の温度(正確に言いますと外壁の裏面の温度)が、床下から出た空気(仮に10℃として)より高い温度(10℃以上)であれば、熱は、外壁材から通気層の空気に移動して、空気の温度は上昇します。結果、この理論は正しいということになります。
○ 逆に、外壁の裏面の温度が、通気層の空気の温度より低ければ、熱は通気層の空気から外壁へ移動して、通気層の空気は冷やされます。結果、この理論はウソになります。
○ 外壁温度に作用する要素は、「日射」「外気温」「風(寒風)」の3要素です。
○ 「夜間」や「北側の外壁」は、「日射」がありませんので、「外気温」と「風(寒風)」のみです。
○ 「曇りの日」や「雪の日」も、日射はほとんど期待できません。
<具体的に見てみましょう>
「図C」をご覧ください。
「図A」では、間仕切壁の部分は描かれていませんが、現実には、家には大量の間仕切壁が存在します。それも含めて構造的なものを「図A」より詳細に描くと「図C」のようになります。この「図C」でも、間仕切壁は1本しか描いていませんが、現実には多く存在することを改めて強調しておきます。
<測定時の状況>
測定は2004年の年末から2005年の2月末まで記録しました。年末の雪の日に設置しに行ったとき、最初から驚かされました。測定点1の南側土台付近から、冷たい空気が噴き出していたのです。たしか・・南側は空気が上昇する入り口のはずなのですが・・。
測定点と測定の状況写真を見ながら、イラストではない現実をイメージしてみてください。
<測定器を設置した状況としまして>
カタログやイメージ図ですと、断熱材がピシッと入って見えますが、実際の現場は、結構隙間だらけだなぁ・・という印象でした。適度な隙間を必要とする(?)独特の理論ですので、断熱材は隙間をあけて設置するのかよくわかりませんが、この手の工法は、カタログよりも現場を見ることも大切だなぁ・・という思いをしました。似たような別の工法を見たときもそのように感じました(^^;)
測定結果は次の章でお楽しみに!