この「気流止め」は、施工方法がいろいろと存在しますが、初めてこういう住宅を手がける工務店さんにとっては、不慣れだという事情も手伝って、面倒くさくなってしまうことが多いのも事実です。結果として「なにもここまでしなくたって大丈夫だ!」と根性論めいた判断で、手抜き工事をしてしまうケースもあるようです。
私も含めてこういう家づくりを長年してきている方々は、それなりに手間の掛からない施工方法を工夫してきています。現場でのミスを極力なくす手法にもなりますので、プロの方であれば参考にしてみてください。
○基本は「先張りシート」
「気流止め」は、「断熱する壁(外壁にあたる壁)の上下を閉じること」、「内部の間仕切壁の上下を閉じること」の2つです。
その最も基本となる施工方法が、「先張りシート」と呼ばれる作業工程です。
基本施工1:床まわり(断熱する壁)
まず、下図は、従来の在来軸組み工法における、一般的な床組みです。
土台の上に、床を支える「根太」を乗せます。
この床組みを変えていただく部分が1つあります。
それは、基本的には根太を土台に乗せないで、土台の脇に根太掛けを設置して、その上に乗せるという施工方法になります。(外貼り断熱+基礎断熱では従来のままでも基本的にはOK)
理由は、根太を土台の上に乗せると、壁下部の「気流止め」が大変施工しづらくなるためです。
<壁が充填断熱工法の場合>
「図お」が、壁を充填断熱工法でした場合の基本的な納まりです。土台と根太掛け材の間に、幅30cmくらいのポリシートを挟み込みます。「先貼りシート」と呼ばれるものです。これで、床下の空気が壁の中に入る道を塞ぐのです。土台が直行する部分は、「図か」のようにシートを丁寧にカッティングしてブチルテープで土台に固定します。大引きも同じなのですが、数が多いので、先貼りシートを施工したあとに大引き受け金物を使って施工する方が多いと思います。
最近では、根太を無くして根太レス合板により気流止めをする方法も多く採用されています(後述)。

<壁が外貼り断熱の場合>
「図き」と「図く」が、壁を外貼り断熱にした場合の基本的な納まりです。「図き」のように、外貼り断熱+基礎断熱であれば、床下は室内と同じ扱いになりますし、壁の中も室内扱いですので根太組みは従来のままで問題ありません。ただし、天井まわりが外部に漏気していないことが条件です。屋根断熱などにすれば、基本的には問題ないでしょう。「図く」のように、外貼り断熱+床断熱であれば、やはり「気流止め」は必要になります。「図く」では先貼りシートではなく、床下地合板を土台の上に差し込んで「気流止め」とした例です。この方法は充填断熱工法でも大丈夫です。

「図け」は、充填断熱工法での床下地合板による「気流止め」の一例です。パッと見、防湿層であるポリシートが土台に達していないので基本に忠実には見えませんが、【ACT2】で記述しましたように、長期の内部結露は、水蒸気の「供給」と「放散」のバランスですので、「根太レス合板+間柱受け材の透湿抵抗」と「構造用合板1枚の透湿抵抗」では、外部への放散の量が多いバランスになり、内部結露の可能性は低くなります。かつ、水蒸気は軽いため上昇しますので、生活水蒸気の大半は床下に行くことはありません。
そのため、最近では、こちらの応用施工を採用している住宅会社さんが多いような気がします。建て方中の作業性という点でも、大工さんにとっては、先貼りシートをまたぐより、水平な合板の上を歩いて作業できるほうがスムーズという利点もあります。