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木の香の家

教えて「断熱さん!」断熱コラム 断熱勉強講師を務める、木の香の家代表白鳥顕微志の書きおろしコラム〜牛一頭いれば家一軒が暖かくなります

【ACT3-5】気流止めの施工方法:桁まわり(参考までに)

桁まわり(断熱する壁)と 間仕切壁の上部(天井断熱部分)

まず、下図は従来の一般的な天井まわり、小屋まわりの組み方です。
ACT1で記述しましたように、それなりに問題があります。

従来の天井の施工方法

この状態をあまりいじらないで天井断熱を正しくする方法が「図こ」です。ポイントは3点です。

◯1つは断熱層の「気流止め」として、防湿層であるポリシートを小屋桁まで到達させます。
◯もう1つは間仕切壁の「気流止め」で、間柱を天井の防湿層(天井下地と同じ位置)でいったん止めます。そして、防湿層をきれいに連続させてから、部屋の間仕切壁の間柱を施工するという方法です。
◯そして、基本的には、天井の断熱材はグラスウールかセルロースファイバーの「ブローイング」です。細かい断熱材ですので、間柱があっても隙間無く断熱層を形成できます。

内部結露や暖房熱の漏気を防ぐ基本構造

ブローイング

「図こ」は、この工法が始まった頃の基本的な納まりです。しかし、絵で描くほど簡単ではなく、面倒な部分も多々ありました。何と言っても、間仕切壁のところで筋交いがある部分の処理です。上図では描き込んでいませんが、筋交い自体は途中で切ることが出来ませんので、「そこは丁寧に防湿層を連続させる」という「努力」しかありませんでした。私も当初は、この方法で、地味に丁寧に施工していました。(写真)
ただ、技術とは進歩するもので、さすがに面倒臭いと感じ・・、いろいろな人が色々考えて、情報交換しあって、簡単な施工で性能を安定させる方法が生まれてきています。
その施工方法を2つほど紹介しておきます。これから取り組む人は、こちらのほうが良いと思います。

「図さ」と「図し」がそれです。基本的な考えは、断熱する層を、天井直上ではなく、小屋桁間や、小屋桁上に設けるということです。この施工方法のメリットは大きいです。間仕切壁の「間柱」や「筋交い」、「構造用合板」が今までと何にも変える事なく施工できるのですから!!。小屋桁や小屋梁をケチケチしないで太い材料を使う必要は出てきますが、微々たる問題でしょう。

上:天井断熱の応用施工1(断熱天井をつくる) 下:天井断熱の応用施工2(桁上断熱)

「図す」が壁を外貼り断熱、天井を発泡材で断熱する場合の図です。基本的に「図し」と同じように桁上断熱になります。正確に言うと、小屋束などがありますので、天井は外貼り断熱ではなくなるのですが、垂木のせいを大きくして小屋束の本数を減らせば熱橋の問題も少なくなります。
図を描いていて気づいたのですが、「垂木」と「小屋桁」と「断熱材」の接点の部分が複雑になりそうなので、この部分は各社で工夫していると思います。

天井断熱の施工(壁は外貼り断熱)

ここで、ちょっと小休止

【「自然」「適度な隙間」の言葉に潜む危険性:「不必要な隙間」の事例】

このように熱漏れする隙間を塞ぐことが「気密」の原点なのですが、外部に熱漏れしてしまう上下の隙間でも、表現によっては受け取りようが違ってきます。ACT1でも触れましたが、仮にこういう隙間を「自然の空気が流れる適度な隙間」と表現すれば、あたかも必要な隙間のように感じますが、「熱漏れして、冷たい空気が走る隙間」と表現すれば、不必要な隙間となります。言葉から受けるイメージとは怖いものです。
こういうときによく曖昧に多用されるのが「自然」という言葉だと思います。「自然」という言葉は私も好きです。しかし、住宅業界に長く居て感じるのは、物理的に説明のつかない部分をごまかすためや、手抜き施工をごまかすために「自然」という言葉を利用して、曖昧にお客様を丸め込むケースが多いような気がします。

手抜きの断熱施工

よく聞くのが、いいかげんな断熱施工をしているのに、「適当に隙間が開いているくらいが、自然の木にはいいんだよ・・」などです。
上記の「写真Ⅰ」は、「【高断熱住宅+オール電化】でお願いしたのに、夜まで蓄熱暖房機の熱がもたずに寒くて困っています。調べてください。」と言われて検査に行った現場の写真です。天井裏にもぐって、2段天井の壁裏を見てビックリしました。現場で発泡系断熱材を切って、充填施工したのでしょう。硬い木の間に硬い断熱材を現場で切って施工するわけですから、柱と断熱材の間は隙間だらけでした。木が少しやせて、隙間が大きくなった部分は断熱材が外れかかっています。この隙間も、「適度な隙間」と表現すれば正論のように聞こえますので、本当に言葉の表現とは怖いものです。
そもそも使っている断熱材がB類1種の時点で、この会社の家づくりに対する姿勢が疑われます。B類1種を充填断熱した場合の性能の悪さは、「イメージと現実」のコーナーで記述しております。
ちなみに、建てたのは有名な全国フランチャイズさんです。

また、下の「写真Ⅱ」もいい加減な断熱施工の写真です。建て主の知人の方から、これでいいのか見て欲しいと言われて見に行った現場です。ACT1で記述しました「袋入りグラスウール」の施工精度です。コンセントボックスのまわりで、袋が邪魔して、きれいに断熱できていません。断熱材の長さが少し足りなかったのに、袋入り断熱材をカットして足すのが面倒だったのでしょうか...、断熱材がない部分もありました。完全な断熱欠損です。コンセントボックスだけでなく、もし、筋交いを使っている現場であれば、この「袋入りグラスウール」のたわみによる断熱欠損はもっと多くなります。筋交いの付け根でぐちゃぐちゃになるケースが多いのです。
この現場も「適度な隙間が木造にはいいんだよ」・・と現場の方が言っていたそうです。
ちなみに、この写真は、全国展開している有名な大手ハウスメーカーさんの現場です。

袋入りグラスウールのたわみによる断熱欠損