先述のように仕上げ天井のすぐ上で断熱層を作ることは難しいです。もし、きちんと防湿気密層を作ったとした場合、お勧めの断熱材はブローイングです。ブローイングは、粉々になったグラスウールやセルロースファイバーなどを厚く吹き敷き詰める・・という感じの断熱方法です。
上の写真は40cmくらい分厚く吹いている施工写真ですが、こういう断熱方法ですと、天井下地のところで動く空気層も出来ませんので、断熱性能は安定します。
ただし、ここでも気づきにくいリスクがあります。
(リスク その1)
下の写真も、全国展開している超有名ローコストハウスメーカーさんの天井裏です。

ブローイングの厚み自体、かなり薄いのも問題ですが・・ダウンライトのところで、火災の危険性があるためブローイングを避けざるをえません。

この断熱材を避けた部分からは、室内の暖房した熱がどんどん逃げていきますので、断熱性能が悪い家になります。しかし、火災の方が怖いので仕方がありませんが、もう少し断熱施工をきちんと考えてほしいものです。
(リスク その2)
仕上げ天井のすぐ上で断熱層を作る場合で、意外と盲点となっているリスクは換気ダクトです。
また、問題が起きそうな施工写真を掲載いたします。
なぜ、換気ダクトが断熱層の上にあるとダメなのでしょうか・・。
熱交換換気の場合は理解しやすいと思いますが・・
実は第3種換気の方式でも問題が発生する場合があります。
次の事例は、私がSOS連絡でお伺いしたお客様の事例です(他社さんの建築)。
SOS内容としましては、家の中の空気が「悪臭」と「湿度が高すぎ」でひどい環境になっている・・というものでした。
お伺いしたとき、すぐにびっくりしました。
確かに異臭と湿っぽさがすごいのです。
私は「換気を止めて生活してませんか?」と尋ねました。
そのお客様は「いえいえ、きちんと動いてます。ただ・・変な音がするんです。」
私は、脱衣室のところに行き、換気グリルに耳を寄せました。
そうすると・・「ごぼごぼ・・ごぼごぼ・・」と変な音がするのです。
「??・・なんだろう・・??」と思い、小屋裏に入って調査することにしました。
そして、断熱材の上にある換気ダクトを持ち上げたとき・・
その答えが分かりました。
なんと・・脱衣室の換気グリルから大量の水が出てきたのです・・。
これは、どういうことなのでしょうか・・。
メカニズムは下図で表しますが、換気ダクトの中で大量の結露が起き、その水分の重みでダクトが垂れ下がり、最後には結露水で換気がストップしてしまっていたのです。
つまり、換気システム自体は電気が通っているのですが、換気は完全に止まっていて、その結果、「異臭」と「高すぎる湿度」の劣悪な住環境になっていたのです。
排気だけする第3種換気といえども、断熱層の外に出す場合、リスクがあることをきちんと理解しておきませんと、こういうことにもなりますので、心当たりのある住宅メーカーさんは断熱ダクトを使うなど、対策をお願いいたします。
天井仕上げ面のすぐ上に断熱層を設けることは、電気工事や換気工事などで神経を使う方法ですので、しっかりした業者さんの知識が必要だと思います。