
耐力壁・耐震壁の話になりますと、これも各社、自社の選択した強みだけを言い、メリット・デメリットはお話ししないのが常です。耐力壁の施工方法としましては、主に「構造用面材」「筋交い」の2つがあります。さて、どちらがいいのでしょう?
結論から申し上げると、どちらでも良いと思います。どちらにもメリット・デメリットがあるのです。耐震等級で1~3まで、お客様がご希望の等級にすることだけ気を付ければ良いと思います。重要なことは、「長期にわたって内部結露をさせない構造であること」です。内部結露すれば、構造用面材はブヨブヨし、筋交いは根元から腐る・・という現象になりますので、結局、どちらでもダメなのです。もう1つ重要なことは「断熱材との相性がある」ので、これだけは細心の注意を必要とします。
筋交いを主体とする会社さんの多くは「安いから」というのが、実は本音だったりします。耳に心地よい表現で、それを美化するわけですが、そこには断熱材の選定を間違うと、大きな落とし穴もあるので、注意が必要です。
●筋交いと相性の悪い断熱材は、
です。ただし、外側にきちんと付加断熱していれば、その心配も少なくなります。
●筋交いと相性の良い断熱材は、
です。
詳しい説明は「イメージと現実」のページで。
木の香の家では、外周面の耐力壁に構造用面材を採用しております。理由は大きく3つあります。
構造用面材を採用するときの大きな理由の1つめが、耐震計算値に+αの力が加わるためです。
実は耐震計算の際、窓上、窓下は、耐震壁の計算から除外されます。
しかし、性能表示制度では、窓上・窓下も耐力施工していれば、計算していいことになっております。
つまり、筋交い工法でも、窓上・窓下に筋交いを入れれば、耐力壁は増えていくのです。でも、それをわざわざ施工するハウスメーカーさんはおりません(私だってしません)。構造用面材であれば、窓上・窓下にも必ず施工しますので、必然的に+αの耐震壁があちらこちらにできているのです。
構造用面材を採用する大きな理由が、一瞬の歪(ひずみ)の少なさです。
最終的な耐震性は、耐震等級で決まりますので、筋交いでも耐力面材でも量の多いほうが上です。
ただ、地震のときの一瞬の歪(ひずみ)は、どうしても筋交いの方が構造用面材より大きくなってしまうのです。
(筋違いと面材の歪(ひずみ)実験:筋交いはどうしても歪(ひずみ)が大きくなります。)
その一瞬の歪(ひずみ)が大きいと、先述したように・・断熱材が固いものだと隙間が生じて断熱性能低下につながります。また、構造用面材は歪(ひずみ)が少ないため、大胆な空間を創るために助かります(^^)。
下記の写真は、コーナーに大きな窓を設置したパッシブソーラーハウスですが、この設計で東日本大震災を経験しました。
地震直後・・もしかして、ガラスが割れているかも・・と思い、お客様のところへ急ぎ向かいましたが、なんと、こんな大きなコーナーガラスでも全くの無傷でした。筋交いで構成していたら、一瞬の歪(ひずみ)の大きさに割れていたかもしれません。
木の香の家では、「世界基準の断熱性能+パッシブソーラー」を基本的なコンセプトとし、そして、きちんと厚みを確保できるように・・という意図で、外周面に構造用合板を採用しております。
木の断熱性能は、断熱材の1/3~1/5程度と弱いです。
仮に筋交いを多用すると、実はその分、断熱性能は低下していきます。
特に筋交いをダブルで入れた部分は、断熱材は僅かしか入っていない・・ということになっているのです。
しかも、ダブル筋交いの部分に断熱材を丁寧に作業できる・・とは、とても思えません。
一晩で約1℃しか下がらない家づくりのため・・筋交いよりコストは高くなりますが、外周面は構造用面材で構成しております。
外周に対して、内部は筋交いを耐力壁として採用しております。この理由としましては、断熱層に関係ないのでコスト重視です。配線しやすさもありますので、内部は筋交いが基本になります。