北上事務所
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木の香の家

価格について

住宅価格にまつわるトラブル事例集

よくあるトラブル その1「値引き交渉」

本当に大まかですが、住宅の価格の姿を知ると、次のようなトラブルの原因がよくわかってきます。

<シーン1>

契約時、営業マンに対して次のように言ったとします。「2000万円も儲かってるんだから、200万円値引きしたらハンコ押すよ」打ち合わせに何ヶ月も費やした営業マンにとっては、今までの苦労が水の泡になるかもしれない一大事!悩んだ挙句、しぶしぶ了承して契約を交わしました。さて、この後、この家づくりの展開はどのようになるでしょう。

<シーン2>

営業マンが会社に戻って、事後報告...。

経営の立場:

会社を運営するために、「予算をあと200万円くらい絞って建てろ!」と上司から現場担当に指示が出ます。(経営者の視点としては、2000万円から200万円を値引きしたのではなく、約500万円を見込んでいた経費から200万円を引かれた...つまり、半分近く値引きされたと考えるわけです。)

現場担当の立場:

もともと余裕の無い予算の上、200万円絞るという指示は、ほぼ不可能です。営業マンに文句を言って喧嘩になるか、電話での業者との予算交渉で毎日の大半が過ぎます。当然、現場に顔を出す暇はなく、さらに、コンクリートの強度を落としたり、お客さまの見えないところで材料を落として、予算オーバーしないことに全神経を注ぎ込みます。がっちり予算を削られた協力業者も、人件費がかからないように、慌しい作業をその現場で行います。

<結果>

現場は悲惨な状況になる可能性がかなり高いです。お客さまは200万円儲けたと思っていますが、実は、長い目で見ると大きな損をするケースが多々あるのです。建物がぼろぼろになったり、工期が大幅にずれたり、という表面的なものもあります。しかし、よくあるケースで悲惨なのが、精神的なダメージです。現場監督も魔法使いではありません。予算がなければ、現場は見るからに手が抜かれていきます。その手直しに、さらに時間と予算がかかり、建物はツギハギの衣服のように見えることもあります。お客さまはその過程を見続け、建築中のイライラが溜まります。営業マンとも口論が始まり、「エアコンサービスしろ!食洗機サービスしろ!」と要求がエスカレート。現場監督は精神的にまいってしまい、現場はストップ。お客さまの方でも、家庭内で口論が始まり、「あんたが、あの住宅メーカーを選んだから!」とか、「親父が悪いんだ」とか、家庭崩壊や夫婦ゲンカにまで発展することもあります。この状況は、イメージするより悲惨です。崩壊した家庭を元に戻すパワー。引き渡された愛着の薄くなった家に、ず~っと住むという苦痛。事あるごとに「あの時、ああしておけば...」と喧嘩の火種が一緒に住み着いているような感じ...。

<根本の原因>

お客さまは何故、200万円値引きを要求したのでしょう?もちろん、少しでも安くと思ったこともあるでしょう。住宅会社は2000万円儲かっていると錯覚したこともあるでしょう。しかし、実は、もう一つ原因がありました。それは、大手ハウスメーカーさんの見積もりでした。

「参考までに」と出された大手ハウスメーカーの見積書には、「期間特別キャンペーン出精値引き」と銘打って、出精値引き300万円・400万円という数字が常に示されます。これを見せられたお客さまは、「住宅会社はこれくらいの値引きが当たり前なんだ」と思ってしまいます。

大手ハウスメーカーさんの見積もりは、他社の見積もりと比較できる項目(電気工事・給排水設備工事など)の金額は、非常に安く提示してあります。他社より安いという印象を持たせるためです。その代わり、唯一「当社オリジナル○○構造システム」という項目だけは、目が飛び出るくらい高い金額に設定してあります。オリジナル構造という、お客さまが意見を言えないブラックボックスの中にすべての利益が含まれているわけです。もちろん、値引き分200万~300万円も既に乗せられています。ですから、200万円の値引きが可能なのです。例えば、以前、当社のお客さまのところにも、大手ハウスメーカーさんが来ました。見積書は出精値引き300万円でしたが、最終見積もり金額は、当社の見積もりより400万円ほど高いという結果でした。耐震性・断熱性能などの熱損失係数を提示して当社の方が良かったため、迷わず当社で建てさせていただきました。そしてこのようにも言いました。「当社の規模で、大手ハウスメーカーさん並の見積もり金額で出させていただけたら、『出精値引き700万円』と記入します」と。

ただ、勘違いしていけないのは、大手ハウスメーカーさんの金額が不当なわけではないということ。大きな会社の母体を支えるには、その金額の差は当然なのです。見方を変えれば、良い住宅会社を見つけられない方にとっては、テレビコマーシャルのイメージによる安心料と思えば良いかもしれません。

よくあるトラブル その2「坪単価」

これもよくあるトラブルです。「坪単価約40万円の仕様で、自由設計を進めましょう」と、設計がスタートします。2~3ヶ月間、時間とパワーを使って、ほぼ設計が終わりました。そこで、正式に部材数量を拾い、見積もりを出すことにしました。

建物の内容は以下の通りです。

  • 法定延べ床面積は40坪、
  • 10帖程度の大きな吹き抜けがあり、
  • バルコニーも12帖と広く、
  • 道路から玄関アプローチの間は、全面タイル

としました。

さて、見積もりは、大ざっぱにいくらで出てくるでしょう?
40坪(法定延べ床面積)×40万円(坪単価)=1600万円
と思われたのではないでしょうか?

しかし、そのようには、まず算出されません。
多分、出てくる金額は、1900万~2100万円だと思います。

????なぜ、そういう計算になるのでしょう????

大きな食い違いは、「面積」の認識です。営業マンの説明が不十分ですと、お客さまは坪単価の「面積」が、「法定延べ床面積」だと思ってしまいます。しかし、実際は違います。吹き抜けは床がありませんが、壁や天井は1部屋分あります。バルコニーは、床の防水施工や手すり、外壁などが増えています。アプローチもタイルなど、費用が増えています。しかし、どれも「法定延べ床面積」には影響しませんので、面積の数値は増えません。

「坪単価」に掛ける「面積」は、「法定延べ床面積」ではなく「施工面積(工事面積)」なのです。吹き抜けもバルコニーも、「面積」(100%とは言いませんが)に加えて計算しておきませんと、部材数量を拾ったときに、結果として大きく食い違った見積もり金額になり、トラブルが発生します。怒って契約しなかったとしても、今までのパワーが無駄になりますし、他の会社で見積もりをとっても、そんなに安く出るわけでもありません。ましてや、「嘘をついたから」と営業マンに値引きをさせれば、結局、いろいろ手抜きされた建物が建つだけです。

ヨーロッパの法には、キュービクル単価(気積単価)という考え方があります。「面積」ではなく「体積」で割って目安価格を知る、という考え方です。吹き抜けもロフトもすべて体積に含まれますので、その方が理にかなっていると思われます。

もっとも悲惨なトラブル

「資本金数億円」・「年間着工棟数○○百棟」
安心の実績をうたい文句に、「着工時に工事金額の全額を入金」...
そして... 倒産...

家の形は何も無いのに、貯めたお金は無くなり、ローンは存在しています。最近では、東京をはじめ、北海道や仙台でも、この規模の倒産が出ています。

なぜ、資本金数億円の会社が倒産したのでしょう?簡単に言えば、先述した利益率を大きく下回っても、契約の「数」を上げるという方針に方向転換した会社が、そういう危機に陥ります。そのような会社は、得てして、営業マンがバサバサと価格を切ってきます。他社の提示している安い坪単価のカラクリを知らないまま価格を切れば、利益は出ません。その結果、現場は先述の理由でぼろぼろになり、トラブルが絶えません。ただでさえ薄利なのに、逆にトラブルの修理に赤字になるケースも増えてきます。そのうち、社員の給料を捻出できなくなり、「資本金数億円...しかし、隠された負債総額は数十億円」という状態になっていきます。企業はボランティアではありませんので、利益が無くなれば失業します。

一般消費者の方には、その負債は見えません。だから、怖いのです。
価格にマジックはありません。

経費の考え方

最初に述べましたように、会社は、総工事費の一部を経費としていただき運営しております。作業の合理化などの工夫もしないまま高い価格を提示するのも問題ですが、社会の経済活動にマイナスだと私は思っております。
中小のハウスメーカーは、単純に販売価格の20~28%の経費をいただいて家づくりをしております。仮に25%としますと、2000万円の建物で500万円の経費が含まれている計算になります。一言で500万円といいますと、「取り過ぎ」と思われる方も多いと思われます。しかし、その経費の内訳は、会社運営上おおよそ下記のようになります。

  • 経費の半分:
    会社の存続経費
    (諸活動費・事務所費・光熱費・宣伝費・福利厚生費・定期点検及びメンテナンス費用)
  • 経費の半分:
    人件費(設計者・営業マン・現場監督・事務所経理職員など)

つまり、経費の半分は、その家づくりに携わったスタッフの家族を養う給料になるわけです。それも、家づくりの期間である半年~1年に分割して、ということになります。計算していただけるとおわかりになるかと思いますが、決して、左団扇のような生活にはなりません。この経費率は、単純に%で固定されるわけでもありません。例えば、総工事金額が極端に高ければ経費率は下がっても大丈夫でしょうし、企画プランであれば設計者の人件費が少しで済みますので、その分、経費率は下がってもいいと思います。

当社では、基本的に、

  • フリープランであれば、25%の経費率
  • 骨格が決まったセミフリープランであれば20%の経費率
  • 設計事務所さんですべての図面を描いて、当社が施工のみの場合18%の経費率

で会社を維持しております。

中小ハウスメーカーであれば、「たかが数%」でも、ここから経費率を落としたら、会社経営が息苦しくなってくると思います。言い換えますと、このあたりが、健全経営には限界値ということになります。
「家づくりは、親戚づくり」とも言われます。家を建てた会社が無くなれば、そのアフターという点で、お客さまにとっても悲劇となります。長く付き合うためには、健全経営が大切な時代。そのバランス感覚を失っては、良い家は出来ないと思っております。

まとめ

バブル景気の時代、金額を大幅に上げて必要以上に高い利益を得ていた住宅会社がありました。表現は悪いですが、「素直なお客さまは引っかかり、悪徳業者は必要以上に儲ける」という構図が多かったと聞きます。悪い住宅会社がそのような行為をするため、消費者の皆さんも、「業者にはできるだけ儲けさせないで、駆け引きして値切ってやろう!」という思いで交渉したり、傷を見つけては、何か高価なものをサービスさせておいしい思いをしようという姿勢が生まれるのも自然です。そうすると今度は業者の方も、値切られるリスク分を予め見積もりに乗せておこうという安全策に入ります。足元をみるような、そういう駆け引き関係が出来てしまった家づくりは、得てしてうまくいきません。
100万円値引きするかどうかは、一見、大きい差です。しかし、自動車ローンのような短期のローンとは違い、住宅の35年ローンの中では、月々3000~4000円の減額にしかなりません。無理に100万円の値引きをして家の造りに影響すれば、月々3000円どころの話ではなくなってしまいます。

もし価格を下げるのであれば、その会社経営に影響のなさそうな範囲で、お互いに話し合い、調整することをお勧めします。仕様で調整できれば調整し、経費で調整できれば調整する...。経験則ですが、大きく値引きすることもなく、気持ちよく契約できて、気持ちよく家づくりさせていただいたお客さまには、最終的に、見えないところでいろいろなサービスが付いてくるケースが多くあります。所詮、人間が造っているのですから...。

家づくりをする際は、この点に気をつければトラブルに巻き込まれる確立は低くなり、楽しい家づくりになる確率が高くなると思います。お客さまと施工者、お互いに良い着地点を見つけて、楽しい家づくりを行ってください。

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